事業期間:2016年度〜2020年度

2017年11月 9日 (木) │ ボイスデータからビジネス的価値を創造する技術を学ぶ~ビッグデータ・AI分野~

大阪大学 大学院情報学研究科
コンピュータサイエンス専攻 教授
楠本 真二(くすもと しんじ)

神戸大学 大学院システム情報学研究科
計算科学専攻 准教授
中村 匡秀(なかむら まさひで)

――enPiT2のねらいを教えてください。
楠本先生 : ビッグデータ・AI分野はビッグデータ処理技術、AI技術、クラウドコンピューティング技術等を活用して、社会の具体的な課題を解決するためのスキルを身に付けることを目的としています。現在、各連携校で具体的な内容について準備を進めています。関西地区では、enPiT1と同様に関連大学の先生方と密に連携して活動を進めています。実際のところ各大学からほぼ1名の教員が参加し、定期的な打ち合わせも行っています。
中村先生 : ソフトウェア工学分野の研究者コミュニティといえば良いでしょうか、人的なネットワークがあり、こうしたネットワークを上手に活用していることも、我々の活動の特徴と言えるかもしれません。
楠本先生 : enPiT2 にご協力いただいている先生方はまさに実践教育のスペシャリストであり、大変素晴らしいチームだなというのが我々の認識です。
――教材の準備状況を教えてください。
楠本先生 : プログラムは、基礎知識学習とPBL基礎と発展学習に分かれています。PBL基礎を受ける学生は、全員一定のレベルの知識が求められます。そこで、大阪大学では新しい授業科目を作り、5月〜7月の土曜日に、参加大学も含めて学生を集め、月ごとにテーマを設定して必要最低限の講義と演習を行うようにしました。テーマの例としては、5月であればビッグデータ、6月であればAIということになります。講義や演習に加えて、テーマに関連する企業の方に講演をお願いすることもあります。例えば、ビッグデータの講義の後には、ビッグデータ処理をするうえで必要な基盤技術としてどのようなものがあるかということを含めて、実際にそのビッグデータ処理をビジネスに活かしている企業の方に講演をしてもらいます。
――合宿はどのように行われるのでしょうか?
楠本先生 : 夏合宿も座学というよりも、学生にとって理解を促進させることを考慮しました。実際に手を動かしながら進める授業を計画しているところです。
――大規模データを扱う授業もあるのですね?
中村先生 : enPiT1から所有しているものとして、スーパーのPOSデータがあります。116店舗、33万商品目、3億1千万レコードの売り上げからなるビッグデータです。これを使って、自動発注システムを作って、AIでスーパーの売り上げを最大化することを目標とするストーリーを考えています。
 大学院とは異なり、ビッグデータ処理、AI、クラウドを別々の観点から教えている十分な時間はありません。そこで、ストーリを予め一つに定めて、学習目標を決め、目標と3つの技術を関連付けて教えるわけです。そうすることで、ある大規模データが与えられたとき、「ここはビッグデータ分析が使える」、「この部分であればAIが良い」、「この部分はクラウドとすべきだろう」とするように、学生に自発的に考えさせる工夫を盛り込んだ授業設計ができます。
 何のためにデータを処理するかとか、何のためにモデルを作るかとか具体的な例で考えることができれば、説得力があります。同じ課題なので、学生間の7、8チームで競い合いもできて良いのではと思っています。
――学生に向けてのメッセージをお願いします。
中村先生 : 学生の皆さんには少しきついように見えますが、社会の具体的な課題を最新技術で解決するやり方を学べます。やる気のある学生はぜひ参加してください。
楠本先生 : 実際にきついことは間違いありません。しかし、受講後には見違えるような経験が身に付きます。

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