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2015.06.24 │ voice苦労してこそその本質が理解できる~セキュリティ分野、北陸先端科学技術大学院大学~

enPiT 受講生と先生へのインタビュー特集。今回は、セキュリティ分野からは、北陸先端科学技術大学院大学の皆さんに伺いました。この日は、enPiT セキュリティ分野の修了認定式が行われる日であり、修了式直前の緊張感漂う中でのインタビューとなりました。STEWART, Gavin Lynn(スチュワート ギャヴィン レン)さん、足立大地さん、福田真啓さん、木藤圭亮さん、そして、先生を代表して、田中覚特任助教に、この1年を振り返っていただきました。

皆さんの研究をご紹介いただけますか?

スチュアートさん:私の研究テーマは難読化に関するものです。セキュリティと関連が薄いと思われるかもしれませんが、たとえば、マルウェアは難読化することでそれ自体がどういう操作をしているかがわかりにくくなるため、アンチウィルスソフトで発見しにくくなる可能性が高くなります。

福田さん:音楽指紋の高速検索に関する研究をしています。他の方とは違ってセキュリティ系でない研究室に所属しています。

木藤さん:組込みシステムに特化した楕円曲線暗号のアルゴリズムに関する研究を行っています。

田中先生:私はもともと代数学を専門としており、楕円曲線暗号に使う曲線の構成の理論研究を行っています。木藤さんも楕円曲線暗号に関する研究をされていますが、私の研究が曲線の数学的性質を明らかにするのに対して、木藤さんは、アプリケーションに近い研究テーマですね。

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スチュワート ギャヴィン レンさん 足立 大地さん


足立さん:
研究は標的型攻撃で使われているRATの検知に関する研究を行っています。

enPiTはどのように知ったのでしょうか?

福田さん:昨年4月の入学直後の学内説明会でSecCap(http://seccap.iisec.ac.jp/)があることを知りました。実は、ここ(北陸先端科学技術大学院大学)に入学するまで知らなかったです。

木藤さん:学内全体に告知されるんですよね。

足立さん:ここに入学する前に大学(金沢工業大学)の研究室の先生にenPiTのセキュリティ分野について話を伺いました。この大学を選んだのは、このお話がきっかけです。

木藤さん: SecCapのアドバイザー委員である花田経子先生(新島学園短期大学 キャリアデザイン学科)とご縁があり、先生からenPiTのセキュリティ分野でこういう教育プログラムがあるよというお話を伺いました。それを聞いて、チャレンジしてみようかなと思いました。

enPiTのどんなところに魅力を感じましたか?

福田さん:情報セキュリティの専門家が何を考えていて、どのような仕事をしているかをじっくり学べると思いました。情報セキュリティを勉強しておけば、きっとどこにいても役に立つだろうなということも考えていました。

スチュアートさん:それまで、情報セキュリティを学ぶ機会はほとんどありませんでした。SecCapにはセキュリティ分野のトップレベルの先生方がおり、そこで学べるということで応募しました。

木藤さん:enPiTは手を動かす実践型の教育プログラムなので、自分の学び方に合っていたことも参加理由のひとつです。正直なところ座学があまり好きじゃないんですよ。コーディングして、モノ作ってという方が好きな方なので、自分に合いそうかなと思って選びました。

足立さん:僕も実践型学習であることがひとつの理由でした。また、情報セキュリティ分野を幅広く学べると聞いていたので、参加を決意しました。

こちらはチームで組んでやられたのですか?

田中先生:いいえ。個人毎にテーマをもって取り組むスタイルでした。

スチュアートさん:それぞれに課題が出されて、まわりに聞いたり、勉強会を開くなどしてわからないところを聞いていくという感じですね。

田中先生:一人でコツコツ学んでいくことも重要ですし、教員との受け答えや学生同士でいっしょに考えていくことも非常に大事です。どれがいいかは一概には言えません。いずれにせよ、課題を解くためにはあらゆる手段を想定して手を打つべきということでしょう。

皆さんの研究との両立はご苦労されたのではないでしょうか?

福田さん:あまり効率よくやれない方なので、研究との両立は苦労しました。もうここは単純に時間をかけることで乗り越えました。

スチュアートさん:課題の量の多さには正直なところ参りましたね。

木藤さん:圧倒される量でしたからね。SecCap側の課題もさる事ながら、研究室から出される課題もあって、締め切りが同じ時期だったりするともう涙モノでした。いずれも量が多く、徹夜することもありました。

スチュアートさん:夏休み期間中が一番忙しかったですね。何かに追われているような感じでした。

木藤さん:講義期間よりも、夏休みの方がはるかに勉強していました。

足立さん:私の場合、数学に対して苦手意識が強いため、そこが苦労しました。ただ、実装してみることで理解は深まりました。

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福田 真啓さん 木藤 圭亮さん

受講されたプログラムを100点満点で自己評価してください。

スチュアートさん:このコースを修了することできたので、60点は超えていると思いますが、まだまだ点数を上げていける部分はいっぱいあるかなと思いますね。

足立さん:70点くらい。

福田さん:60点ですね。専門的なものをあまりやっていなかったので。

木藤さん:僕は70点くらいですかね。

皆さん結構厳しい評価ですね。

木藤さん:与えられた課題を締め切りまでに提出することを最優先としたので、どうしても内容が不十分、もう少し検討しても良いかなという思うところがありました。課題の中には、余裕があればチャレンジしてみてくださいというものもあったのですが、実際には手を出すことはできませんでした。そういう意味で70点という感じですね。

スチュアートさん:周りの方々にいろいろ教えてもらうと、自分がそのレベルまで達していないことがよくわかりました。

田中先生:プログラムの修了時に、学生の皆さんにはアンケートをお願いしています。その結果を見ると、enPiTの他の3分野に比べて、SecCapはとても辛口の回答が多いです。分野の違いもあるんでしょうね?

SecCapについて良かった点、悪かった点を一人ずつお願いします。

木藤さん:ハンズオン形式の講義・演習は良かったです。私たちにとって一番学びやすいスタイルだったと思います。

福田さん:当初からの期待でもあったセキュリティの専門家ってどんなことやっているのかある程度わかったので、その点は満足しています。

足立さん:他大学の人たちとチームを組んだ実戦形式が面白かったです。

スチュアートさん: PBLは大阪大学や北陸先端科学技術大学院大学に学生が集まって、そこで複数の大学の混成チームで、2、 3日演習をする形でした。何かを実装するとか、演習は、必要な環境がありますから、そういった環境を与えられ、さらに専門家のフィードバックを得ながらできたことは貴重な体験だったと思います。

木藤さん:先ほども申し上げましたが、課題の量は相当なものでした。

福田さん:課題の量以外に、週末が潰れましたね。参加したかった外部イベントもいくつか参加できず残念でした。

足立さん:講義とか実践で学んだことを振り返られる場もあればさらに良かったですね。

スチュアートさん:やはり、何度か自分でトライしないと理解できないこともありますからね。ただ、それを実際には行うには時間が限られていました。もう少し時間が欲しいと思いました。

福田さん:冬は比較的時間の余裕もあった気がしますが、確かに夏は大変でしたからね。

木藤さん:6月から10月に集中していましたね。

田中先生:複数の大学で実施される講義・演習もあり、中には移動を伴うものもあります。平日の移動となると大学の通常の講義との兼ね合いもあります。どうしても休日開催となることから、結果的に休みの多い夏に集中してしまうのが現状です。また、SecCapの場合、enPiT以前から大学間の連携が進んでいるため、何か変更をするにも大学間の調整が発生し、一筋縄ではいかない問題です。

スチュアートさん:確かにきつかったです。でも、一応理解できるところまで引っ張り上げてくれている感じはありました。

田中先生:情報セキュリティに限りませんが、一度聞いて理解できることってそうは多くないと思います。何度も繰り返し聞き、実践することでやっとわかることの方が多いのです。反復することは大事なんです。でも、限られた時間ですから、課題がどんどん溜まって行ってしまうことも確かです。では、その課題の量を減らすができるかというと、これもまた難しいわけです。端的に言えば、解くのが難しい課題に絞ることで、課題の量は減らせます。しかし、それでは学生が何をどこまで理解しているかがわかりません。わかりやすい課題を与えて、理解度を把握しながら進めることが重要なのです。

木藤さん:何も分からないまま進んでいくよりは、その瞬間は辛いけれどわかる方が断然いいですね。

先生から見て、他分野とこういう講義があると良いかもというものはありますか?

田中先生: セキュリティの技術は、enPiTのいずれも分野にも関わってくるものなので、もっと交流したいですね。今年度、分野横断講義という取組みでいろいろな講義や演習が分野を超えて実施されました。セキュリティとしてどういう内容を提供していくか今後検討ですね。

スチュアートさん:他の分野が何をしているかをもっと簡単に知ることができるといいですね。成果発表は実際に参加してみたかったのですが、行く時間とお金の準備が必要ですし、ちょっと難しかったです。

木藤さん:異なる分野が協力して一つの講義を行うというのは面白いそうですね。クラウドコンピューティングのセキュリティ、組込みシステムのセキュリティといった感じです。

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田中覚 特任助教

4月から皆さんの後輩の方が入ってきます。一言メッセージを。

福田さん:付いて行く自信のある人には本気でお勧めしますよ。貴重な体験できますしね。

木藤さん:一種の覚悟は必要ですね。時間は割かれますが、得るものは大きいので、お勧めしたいです。

スチュアートさん:多少でもセキュリティに興味があるなら、受けましょう。その価値はあります。最終的にセキュリティの専門家になるかどうかは別の話ですけど、どういう世界なのかを知っておくことは他の分野に関わったとしても重要です。

足立さん:少しでも興味があれば受けてみてください。技術面を心配されているかもしれないですが、やる気があれば何とかなると思います。

(インタビュー・文 西村一彦、取材日:2015年3月9日)